「ひいっ!」

 いつもとは明らかに違う低い声と様子、そして表情を横目で見て、コルネリアは驚く。

「それに、実はあなたを調べていたら、多くの罪が出てきましてね、その一つがフィードル伯爵家の没落の原因となった貿易不正。あれは、あなたが裏で糸を引いていましたね?」
「……知りません」
「しらを切っても無駄ですよ。ある人物から不正に関する証拠の資料、帳簿、全ていただきましたから」
「なっ?!」

 束になった証拠資料を掲げてルセック伯爵に突きつけながらレオンハルトは言う。

「あなたの家の財産を盗んだメイド、なんのために盗んでいたか知っていますか? ……復讐ですよ、あなたへの」
「復讐?」
「彼女はもともとフィードル伯爵家で最後まで雇われていたメイド。フィードル伯爵夫妻が命を絶った後もその娘であるご令嬢に仕えていたメイドですよ」
「──っ!!」
「主人であるフィードル伯爵夫妻のため、そしてそのご令嬢であるテレーゼ嬢のために、あなたの財産を奪ったんです」

 そう、全ては自分の蒔いた種であり、それが返ってきた。
 因果応報という、それだけの話であった。