そして、少し収まったかに思えたチャール伯爵が、ルセック伯爵に目をやったまま笑って、そして一気に怖い顔に変化して低い声で言う。

「さて、次はお前の番だな。ミレット」
「……え?」

 チャール伯爵はルセック伯爵へ向けた目をそのまま少し後ろにいた娘であり、ルセック伯爵夫人である彼女へと向けた。
 なぜ自分がそのような目を向けられるのかわからず、戸惑いを隠せない。
 すると、チャール伯爵は冷たい表情を娘のミレット、そしてもう生気を失っているルセック伯爵に告げた。

「お前たちは子供ができないからと聖女の子供を引き取ったといっていたな」
「──っ!!」
「その子にどんな仕打ちをした? お前たちは愛情を向けず、道具のように扱い、そして力が尽きた彼女を地下牢で何年も閉じ込めたそうだな」
「なぜ、それを、お父様が……」

 その答えにすぐさま答えることはせずに、代わりにミレットに言う。

「ミレット、お前がいくらうちに戻りたいと言ってきても、もううちの敷居を跨がせはしない」
「お父様っ!! それはっ!!」