本を読む時間はあっという間に過ぎ去り、ディナーの時間になっていた。
 テレーゼがいつものようにコルネリアを呼びに来ると、今行きますと一言ドア越しに伝えて向かう。
 すっかりと読みふけってしまった童話の本を閉じてそっと本棚に戻すと、姿見の前に向かって手櫛で髪を整えた。

「あ……」

 そこで彼女はまた気づいてしまった。
 いつ頃からだろうか、この屋敷に来た当初とは違って食事の前に必ず髪を整えて、身だしなみを意識するようになったのは。
 レオンハルトと会う、そんな些細な事でさえも彼女にとっては大きなことで、そして少しでも可愛く見られたいという乙女心が彼女を支配していた。

 そんなことに気づいたのも全て、自分が『恋』をしているのかもしれないと気づいたから──
 彼女はその気持ちを確かめるためにも、いつもより緊張した面持ちでディナーへと向かった。


 ダイニングに入るとレオンハルトはすでに席についていたようで、軽く会釈をして急ぎめに席に着く。