「そう、お父様はがたいが良くて、それでいて鋭い目に髭を蓄えて……そんな見た目だからレオンハルトは怖がってた」

 昔のその怖がっている様子を思い出したのか、ふふっと口元に手を当ててクリスティーナは上品に笑う。
 国王の姿を見たことがないコルネリアの中では、昔どこかの童話で見た地獄の大王のようなそんな姿を想像してぶるっと震えた。

(確かに、そんな姿だったら恐ろしいかも……)

 実のところ確かに国王は髭も立派に蓄えており、そこらの成人男性よりもはるかに背も高くてがたいも良い。
 だが、娘のクリスティーナを始め、子供や小さく可愛いものには滅法弱く、可愛がりたい気持ちが溢れ出てしまうのだが、それが「圧」となって相手に伝わり、その気持ちを知っている娘以外からの大概の子供たちからは逃げられてしまう。
 レオンハルトも例外でなく、特に国王が可愛がっていたのだが、どうしても彼の臆病で怖がりな性格と合わず、相いれなかった。
 子供の頃の彼に逃げられてしまうたび、宰相に慰められるほど落ち込んでいた。