「ヒルダさん」
「さん、なんてつけないで。気持ち悪い」
「じゃあ、ヒルダ。あなたが苦しい思いをしていること、私のせいです。謝ります」
「ふんっ!」
「あなたはいつも聖女の力を人を守るために使っていると聞きました。お年寄りの荷物を運ぶため、風邪で倒れた子供たちの介護、怪我をした人の治療……。あなたは立派な聖女、ううん、立派な人間ですね」
「……なにが言いたいの?」

 コルネリアはヒルダの手を取ると、優しい微笑みをヒルダに向ける。

「私はレオンハルト様……ヴァイス公爵様に救われました。彼はたくさんの愛情を私に向けてくださいました、だから今度は私がそれを返す番です。彼に、そしてあなたたちにその受けた愛を返していきたいのです」
「……なに、偽善者なの?」
「今はそう思っていただいて構いません。ですが必ず、あなたたちに非難の声が向かないようにしてみせます。必ず」

 ヒルダは決意の目をしたコルネリアをじっと数秒見つめると、長い髪をさらっと靡かせて背を向ける。

「やれるものならやってみなさい」
「……っ! ええっ!」