レオンハルトに連れられてコルネリアは10数年ぶりに教会と孤児院にやってきていた。

「……」

 懐かしいようなそうでないような、小さい頃の記憶がほとんどないコルネリアは不思議な感覚に陥る。
 王国で一番有名で神聖な場所と言われているこの教会は、建物の大きさや敷地はそれほど大きくはない。
 ここのシスターと王国の「贅沢は神聖さを失う」という方針の上で成り立っており、皆質素な生活を心がけている。
 ただし、劣悪な環境というわけではなく、無駄に浪費をしないことを心がけて清い心を保ち続けるというもの。
 コルネリアもその精神を知らず知らずのうちに引き継いでいた──

「おかえりなさい、コルネリア」
「……シスター?」

 自分を呼ぶ声のほうへと身体を向けると、そこには自分がおぼろげにしか記憶がない、それでも聞き覚えがあって優しい雰囲気をまとったシスターがいた。
 もう腰が曲がり始めており、立つのもかなり一苦労と言った様子のシスターは、それでもゆっくりとコルネリアのほうに歩みを進める。