確かに鏡を見る暇もなくそのまま植物園のほうへと来たのだが、まさかそんなにひどい顔になっていようとは、さすがに恥ずかしくなる。
 レオンハルトは存外可愛らしい性格をしており、好きな人にはひどい有様や無様な姿を見せたくないと思うのだ。
 まあ、それゆえにあの”秘密の姿”をコルネリアにも見られたくなかったのだが……。

 コルネリアはテレーゼに渡されていた小さめの鏡を取り出すと、そのままレオンハルトに突きつける。
 鏡を受け取った彼は自分の顔を見つめ、あまりのひどい顔色にすぐに鏡を下ろした。

「コルネリア」
「はい」
「申し訳ないが、今日は植物園での話はこのくらいにしてもいいだろうか」

 ええ、大丈夫ですよ、ゆっくり休んでください、と言おうとしたコルネリアだったが、その言葉が口から紡がれる前にレオンハルトに腕を引っ張られる。

「──っ?!」


 レオンハルトに連れられるままやって来た場所は、彼の寝室だった。
 扉を勢いよく閉めると、ふうと言った様子で息を吐き、コルネリアを解放する。

「ごめん、いきなり。でも、間に合わないと思って」