自分がどちらに向かっているのか、これからどうするのか、何もわからずあてもなく。

 そんな時に偶々社交パーティーの帰りだったレオンハルトの乗る馬車に見つけられ、彼に拾われた。
 テレーゼは数日で動けるようになったが、また迷惑をかけてしまうと思い、テレーゼはヴァイス家を去ろうとした。

 だが、レオンハルトはそれを止めた。

『君の奥底からは生きたいという思いが伝わってくる。本当は生きたい、そうじゃないのか?』

 そう言われてテレーゼはドキリとした。
 両親の死を知り、後を追って死のうとしていた時もあったが、彼女の中に眠る生きたいという欲望が消えなかった。
 それは死んだ家族のためにかもしれないし、最後まで残っていたあの三人の使用人たちのためかもしれない。

「あの時のレオンハルト様の言葉がなければ、私は屋敷を出て野垂れ死んでいたでしょうね」

 月に手をかざして掴もうとするが、当然それは掴めはしない。

(あの時から私は生きると決めました。生きて、生きて、そしてこの屋敷のために働く。私の新しい居場所、今度こそ守りたい)

 ふとテレーゼの脳内にコルネリアの顔が思い浮かんだ。