ああ、どうしてこんなことになってしまったのだろう──

 テレーゼ・フィードルはお茶会用におめかしをしたドレスを床につけながら、そして膝から崩れ落ちる。
 自邸に着いたすぐ後、そのまま何か騒がしい様子に気づいてメイドに声をかけるが、慌てた様子で彼女はテレーゼの背中を押して近くの応接室へと向かわせる。

「どうしたの? ミア」
「テレーゼ様、落ち着いて聞いてください」
「ええ、なに?」
「旦那様と奥様が……亡くなりました」
「…………え?」


 彼女が両親の死を伝えられたのは18歳の時。
 もうメイドや執事たち使用人にもわずかに残った給金だけを渡して雇用契約を解除し、皆それぞれの場所へと散っていった。

 古参の執事や一部の使用人だけがテレーゼの両親とテレーゼの世話をするために屋敷に残っていたが、もう皆次の日に解散というところであった。
 そんな前日にテレーゼの両親は自殺し、そしてテレーゼはショックのあまり自室で一晩うずくまって過ごした。

(いけないわ、私が皆を守らなければ)