街に出かけた数日後、レオンハルトは約束通りコルネリアにマナーの講師を紹介した。

「彼女がマナーの講師だよ」

 そう言われて紹介されたのは、いつも自分のお世話役として傍にいるテレーゼであった。

「テレーゼさん……?」
「ぜひテレーゼとお呼びくださいっ!!」

 テレーゼはそれはそれは深々とお辞儀をすると、顔を上げた後にコルネリアに対してにこやかに微笑みかけた。
 コルネリアはてっきり外部の人間──それも怖い形相をした笑顔のない厳しい人間を想像してしまっていたが、見知った顔であったために驚き目をパチクリさせた。
 レオンハルトはコルネリアの肩にポンと手を置くと、安心させるようにそっと微笑みかけてそのまま部屋を後にした。

 部屋の中にはコルネリアとテレーゼのみが残されて、二人の間に一瞬の沈黙が流れる。
 ──先に口を開いたのはテレーゼだった。

「さ、奥様。いつもの私とは一味違いますよ~!!! ビシバシいきますから、そのつもりでいてくださいね!!!!」
「え、ええ……」