とまあ、そんな風にルセック伯爵の主張としては夫人の魅力、特に女性としての魅力が日に日に落ちていったということなのだが、夫人としてはそんなことが浮気をしていい理由にならないというのが主張だった。
 それに夫人としては自分だけでなく、同じような食生活を送っているルセック伯爵の体形も同じでしょうが、という思いでいるのだが、もちろん伯爵自身は気づいていない。
 下っ腹どころか顔も腹もたぷたぷとしたふくよかを通り越した体形に、もはや夫人も愛想をつかしていた。
 だからこそ、夫人は自分の体形を理由に浮気を正当化したような言い草をする旦那が許せなくなり、ついに浮気の証拠を突きつけることにした。

「あのね、証拠は掴んでるのよ?!! 社交界で若い子爵令嬢と仲良さそうにしていたそうじゃない」
「ああ、あの子か」
「その子と何? 親しげに話しただけでなく、バルコニーで唇を合わせていたそうじゃない」
「そんなことはしていない」
「それにその数日後にあなた郊外に出張だって二、三日空けたこと覚えてるわよね?」
「ああ」