その言葉を聞き、ゆっくりと頭を上げた瞬間に、彼女は目の前にいた彼に抱き寄せられる。

「──っ!!」
「謝らないで欲しい。その気持ちだけで僕はすごく嬉しいんだ」

 レオンハルトの胸の中でコルネリアは彼の言葉を静かに聞く。

「マナーを学びたい、勉強したい、その思いを僕は尊敬するし、僕にできることならなんでもするよ」
「レオンハルト様」
「マナーに関してはいい人がいるから任せておいて」
「はい」

 レオンハルトはそっと彼女の身体を離すと、彼女の目を見つめて優しい顔つきで言う。

「実は今日王宮から呼び出されたのはね、ヴァイス家の新しい事業について話をしていたんだ」
「新しい、事業?」
「ああ、昔おじい様がやっていた福祉事業をもう一度ヴァイス家がおこなうことが正式に決定してね。事業の開始はもう少し先だけど、コルネリアの育った教会と孤児院の管轄がうちになるんだ」
「管轄が変わっていたのですね」