コルネリアの中でも確かに『感情』が動き始めており、そしてそれは目の前にいる彼によって少しずつ動かされていく。

(この人のために何かしたい)

 心で思うほど易くはないがただそれでも、聖女の一人としてもてはやされた時期の後の地下牢での生活を強いられたことで感情が欠けてしまった心に比べると大きな回復でもあった。
 レオンハルトは自分の記憶の中にある2歳の時に出会ったコルネリアをふと思い出して語り掛ける。

「君はもっと自由に生きていて、そしてそんな君が羨ましくてどこか眩しくて、そして僕は恋に落ちた」
「公爵様のような素敵な方が私を好いてくださっていいのですか?」

 レオンハルトはそんな控え目で遠慮がちに問いかけるコルネリアの頬を撫でると、そっと指で涙をふき取って言う。

「君だから良い。僕は、君だから好きになった。僕の隣にいるのは君しか考えられない」
「公爵様……」

 彼女は初めてはっきりと「嬉しい」という感情を実感することができたが、まだその感情が彼と同じ「恋」という愛情であることに気づくことはない。