「お父さん、そんな緊張しなくても大丈夫だよ」

「おっ、おお。 そうだな……」

「こっちまで緊張しちゃうじゃない」


式が始まる前にリハーサルをしたとはいえ、手と足が一緒に出てしまいそうなくらい緊張をしている父。

こればかりは私もどうしようもなく、ただ「大丈夫だから」と緊張を和らげることしかできない。

そうこうしているうちに目の前の扉が開き、入場の時間となった。 さっきとは違い、私たちの大切な人がたくさん参列してくれている。


ここまで大切に育ててくれた母。

どんな辛いことも、嬉しいことも一緒に乗り越えてきた麗華。

〝間違っていないよ〟と、私の選択を認めてくれた亜美。

妊婦の私を快く雇ってくれた、穂んのり弁当のご夫婦。


ゆっくり、ゆっくりヴァージンロードを歩いて、素敵な人たちに恵まれて育ったのだという感謝の気持ちを噛み締める。

望さんが待っているところまで歩くと、父が望さんの方へと手を差し出し、私の手は望さんの方へと繋がれた。

一瞬視線を父の方へとやると、父はハンカチで涙を拭っていて、その姿を見て鼻の奥がツンと痛くなって涙が溢れそうになる。

グッと涙を堪えて、望さんと並んで牧師さんと向かい合わせになった。