グレーのタキシードに身を包んだ望さんはいつも以上にかっこよくて、ドキドキしてしまう。

ゆっくり、ゆっくりヴァージンロードを進み、聖台の前で望さんと向かい合った。


「水姫……綺麗だ。 本当に…こんなにも美しい人は、人生で初めて出会った」

「……っ! 望さん……そんな、最上級の言葉、式の前に言わないでくださいよ…」

「悪い……どうしても、抑えられなくて」


照れ笑いを隠すかのように、口に手を当ててそう言った望さん。

「ありがとうございます。 大好きです」と言いながら、望さんにぎゅっと抱きついた。


「水姫、世界一綺麗だ」


私の身体を優しく抱きしめ返してくれた望さんの声は、少し震えていた。

つられて泣きそうになってしまったけれど、今日は1日笑顔でいる!と決めたから、今はまだ泣かない。


「今日は、素敵な1日にしましょうね」

「あぁ、もちろんだ」


お互いのおでこをくっつけ合いながら、笑顔で言う私たち。

参列してくれるゲストの方々にとっても、ハッピーな1日であって欲しい。
そう願いながら、手を繋いでチャペルをあとにした。


* * *

「それでは続いて、新婦様がご入場されます」


チャペルに響いている、司会の方の声。

チャペルの外で待っている私の横には、緊張でガチガチに固まっている父がいる。