帰りはお互いにずっと黙ったまま、車は桜川先生のマンションへと到着した。

麗華には道中にメッセージをしておいたのだが、メッセージからも伝わる興奮……明日顔を合わせたら、きっと質問攻めの嵐に違いない。

車を決められている場所へ丁寧に駐車させると、桜川先生は再び私をエスコートするため助手席側へと回り、ドアを開けてくれた。


「降りようか。　ここの最上階が、俺の部屋なんだ」

「はい……ありがとうございます」

「足元、気を付けて」


そう言いながら私の手を取ると、そのままエントランスへと歩き出す。


もう……本当にドキドキが止まらない。


こんなに私のことを丁寧に扱ってくれる男性がいるなんて、信じられない。

高級フレンチをいただいて、さらに桜川先生のマンションへお邪魔することになるなんて、未だに夢を見ているのではないかと疑ってしまう。

エレベーターに乗って最上階へと到着すると、桜川先生は慣れた手付きでルームキーをかざし、玄関のドアを開けた。


「遠慮せず入って。　そんなに広くはないんだけれど」

「お……お邪魔します」


玄関でパンプスを脱ぎきれいに揃えると、案内されながらリビングへと足を進める。

室内を見た瞬間、息が詰まりそうになった。

本当にマンションの一室なのだろうかと思ってしまうくらいに広いリビング。
夜景が一望できるくらいの、大きな窓。