君の全部になりたい【完】



じゃあね、と新堂くんに手を振ってその姿を見送る。


爽と新堂くんがすれ違う瞬間、とんでもない殺気を感じたけど、気のせいかな?



…さあ、2人きりになってしまった。



「へえ、"ただの執事"ね。」


真っ黒なオーラの爽が教室の境界線を超えて一歩、また一歩と近づいてくる。



「な、何?」



「別に?」



にこり笑うけど、目の奥が全然笑ってない。



「…美桜、なんて呼び捨て新堂くんびっくりしてたよ。」


他の家でも、有名な寺門家と深山家の関係。


付き合ってるかも、なんて噂だけでも致命的だよ。


「コースター、あいつにあげたんだ?」


私の言葉なんて無視して、近づいてくる爽に後退りする。


…すごい怒ってる。


「…うん。」



「俺にくれるっていったじゃん」



怒りに満ちた目が、私のことを捕まえる。


ぎゅって心臓が痛くなる。