君の全部になりたい【完】




「美桜。」



静かに響く声。



「なに?」




「…こんなの拷問なんだけど、」



意味はよくわからない。



でも爽もどきどきしてるってことだけはわかる。


だって胸の音がずっと聞こえるんだもん。



静かな室内に、2人の心臓が響いてもおかしくないくらい。



「爽の匂い大好き」



これしか伝えられないから、



爽のごつごつとした鎖骨に顔を埋めながら、アールグレイの香りをいっぱい吸い込む。




やっぱりすごく落ち着くね。



このまま、眠れそう。




「俺、このままだと何するか美桜に分からない。」



愁を帯びた、苦しそうな、辛そうな声に、胸が疼く。



暗闇に目が慣れて爽の表情をみると、我慢してるような、何かを耐えてるって顔をしてる。



「…爽になら、何されてもいいもんっ」



ぽつり、爽の胸の中で呟く。


本当だよ?爽に何されたって、きっと嫌いにならないんだ。



言えないけど、だってこんなにも好きなんだもん。