「美桜様お待ちくださいっ」


自分の部屋を出て、ながーーーい廊下を必死に走る。



そう、秀夫さんの声も聞こえずに置き去りにしてしまうほど私が急いでいる理由。



いつもは秀夫さんが開けてくれる大きな扉を開けて、ダイニングルームに飛び込む。




「っ、爽!!」



私のその声に、深山家一同に囲まれている爽が振り返る。



会えるのは実に3年ぶり。



切れ長の目が、私を見つめる。




たまらなくなって、爽目掛けて一直線に走って行き抱きつく。



「美桜様、ご無沙汰しております。」



静かで重厚感のある低い声が耳に届く。



すうっと深呼吸して大好きなアールグレイの香りを取り入れる。



…本当に爽だ。



美桜様、なんて呼ばれるのはすごい違和感があるけど。