「爽っ」
ぎこちない笑顔で対応すると、爽の隣にいるその子がこぼれ落ちそうな程大きな瞳で見つめてくる。
近くで見ると可愛さ倍増だね。
「小夜、俺のお仕えするお嬢様の、寺門美桜様。」
「申し遅れました。小川小夜(おがわさよ)と申します。」
小さくて華奢な体を曲げてぺこりとお辞儀をする小川さん。
小夜、か。
「はじめまして」
どうしても不自然な声かけしか出来ない。
なんで私こんなに動揺してるんだろう。
「爽くんとは、イギリスのスクールでも同級生だったんですっ。こんなところでまた会えるなんてびっくりで!」
「ほんと、俺もびっくりした。まさか小夜が転入してくるなんてな。」
小川さんに向かって笑う爽に、黒い何かが溢れる。
タメ口で楽しそうに話す爽があまりにも自然で、私の知らない顔がそこにはあった。
…正確に言うと懐かしい顔。
「そうなんだ。…私もう行くね。」
お互い見つめあってる2人と距離を取りたくて、廊下で作ったトライアングルが、崩れて行く。



