爽はジャケットを脱いで、それだけを私に渡して、唖然と立ちすくむ私に目もくれず、あっという間にうさぎ小屋に向かっていく。
爽がうさぎ小屋に入ったと確認したと同時に、理科室の火が大きな音を立てて、たくさんの火の粉が舞う。
一気に血の気が引くのが分かった。
うさぎ小屋にあきらかに燃え移った炎。
「爽っ、戻ってきてっ!」
震える身体と、溢れる涙。
ああ、もう全部私のせい。
どうしよう、もし爽に何かあったら。
私も爽を助けに行かないとっ、炎の中に向かおうとした時、
「寺門様、お下がりくださいっ、」
必死に止めてきてくれたのは、恵の執事の大関理御(おおせきりおん)だった。
「っ…でも爽がっ、うぅ、」
あの炎の中に爽がいるの。
止まらない涙。



