君の全部になりたい【完】




すると爽は少し目を見開いて、考えたようなそぶりを見せて、




「それは出来ません。」



「どうして?」




「私は美桜様にお仕えしている身分ですので。」




…もう幼馴染じゃなくて、お嬢様と執事だからってこと?



じゃあ幼馴染だったあの期間は、もう消えてしまったってことなの?


そんなの、



「…つまんない。」



しょうがないってわかってる。



爽がいずれ私の専属執事になって、こうなるのとだって幼いながらになんとなく分かってたけど。


いざその時が来てしまうと、なんだか虚しい。



一気に爽との距離が空いたような。




1番近くにいるのに、1番遠くに感じる。




「申し訳ございません。」




…そんな困った顔をさせたかったわけじゃないの。



もう幼馴染には戻れないってわかって、無性に泣きたくなった。