君の全部になりたい【完】


「わかん、ない、けど…爽とではない、よね。」


なんとなく分かっていた。


勘違いかもしれないけど、爽も私と同じ気持ちかもって。


ダンスパーティの日、そう感じた。



気づいた時はとても嬉しかったよ。



でも私たちは一緒にはなれないでしょ?



「っ、そうだな、」


泣きそうなのは私だけじゃない。



きっと爽も分かってる、全部。


肯定する言葉に、複雑な気持ちになる中途半端な自分に嫌気がさす。




「爽、ずっと私の執事でいてね。」




頑張って、ぎこちないけど笑顔を作って、爽に微笑んだ。



好きな気持ちは、もう終わりにしないと、



私は寺門の人間なんだから。




また夢を見た。




動く電車の中、



オレンジの太陽が差し込んでキラキラ輝いて、



爽の肩にもたれかかって寝る私に、




『美桜、ごめん。好きだ。』



爽が今にも壊れてしまいそうな表情をして、



涙を落とす私に、同じ涙を流す爽が、




優しくそっとキスをするの。




…前とは少し違う夢。




爽は消えていってしまわなかったけど、




あの夢より悲しそうな顔をしていた。