君の全部になりたい【完】




「… 言わんこっちゃない。ほら。」



呆れたように笑って、手を差し出してくれる。



「うぅ、ごめん。」



「いいよ。可愛いから。」



さらっと紡がれた言葉に、時が止まる感覚。



「…なっ、へ、変な事言わないで!」



真っ赤になってる私を見て、満足そうに笑うの。


ほんと、性悪なんだからっ。いちいちドキドキさせないでよ…



「危ないから、手握ってろ。」



そう言って、転んでからは手を離してくれず、ずっと繋がれたままだった。



「…うん。」



それが恥ずかしくて、むず痒い。


そして嬉しくて、ニヤニヤしちゃうの。



もう重症だね。



「美桜あのお化け屋敷入って、大号泣したよな。覚えてる?」


お化け屋敷の前、おもむろに立ち止まる爽。


「…嘘?そんなことなかったでしょ。」



そんな覚えはさらさらないし、それにこのお化け屋敷そんなに怖くなさそうだよ?


…まあお化け屋敷入ったことないけど。