君の全部になりたい【完】




あんな近い距離で、両手を取り合うダンスを爽と練習するの?


…私の心臓が心配だ。



夜になり、晩御飯を済ませて、さっそく家の踊り場で爽と練習をする。



「まずは基本のステップから。右足を前へ、その次に左足前に出してください。」


慣れた手つきで、私の手を取り、慣れた足取りでダンスをする。



「う、うん」


昼もやったばかりなのに、私は全然できない。



手を握られて、目の前の爽に動揺してばかり。



「もっと、ちゃんと手を握って。」



爽は何事もないように、普通なのに。



どうしたらいいか分からなくて、オロオロしていると爽とバチっと目が合って、思わず声が漏れる。



「…っ、近いよっ」



「照れてんの?」


意地悪モードに入った爽は、にやりと微笑んで私を見つめる。


「……そんなわけ、」