先生の異動の話を聞いた放課後、先生とタイミングが合わず、話をすることができなかった。
明日は話できるのかな…
でもなんて聞いたらいいんだろう。

ホワイトデーのワクワク感は、とうに消え失せていた。







ホワイトデー当日。
朝から放課後まで、モヤモヤしながら過ごしていた。
今日は先生と話せるのかな、と廊下をうろうろしていた放課後、私の名前を呼ぶ先生の声がする。

「よかった…桜木、帰ってなくて」

心なしか、先生は息を切らせている。
放課後、先生は人気者だから生徒がいなくなるまで廊下で待っているつもりだったけど、先生は私のこと探してくれたのかもしれない。

「ホワイトデーのプレゼント、渡したかったんだ」

よく見ると先生は紙袋を手に持っている。

「ありがとうございます…」
ここで受け取って、そのまま帰ったら先生とゆっくり話す時間がなくなってしまう。

「先生に今日も課題教えてもらいたいです」
思い切って二人きりになる口実を作ってしまった。
本当は今日やろうと思っていた課題は、少し考えれば解けそうな課題だ。

「分かった。じゃあ、いつもくらいの時間に教室で待ってるよ」
そう言い、先生は教室へ戻って行った。