数秒の沈黙のあと、先生はびっくりした様子で
「えっ、俺が貰ってもいいの?」
目を丸くしている。

「先生が好きそうなチョコを買いましたっ」
受け取ってほしい。

「嬉しい、ありがとう」
先生は嬉しそうな顔をして、チョコが入っている紙袋の中を覗き込む。

「見てみてください!」
先生の反応が気になる。
先生は、ゴソゴソと紙袋の中からチョコの箱を取り出す。

「猫の形したチョコだ!かわいい」
猫好きな先生なだけあって、満面の笑みだ。

「喜んでもらえてよかったです」
ものすごく悩んで選んだチョコだったから、喜んでもらえてほっとした。

「じゃあお返し楽しみにしててね」

「えっ、お返しなんて申し訳ないです!私が渡したくて渡しただけなんで…」
そう言いながらも、先生からのお返し、本当はもらいたい。

「俺も桜木にお返ししたいから、渡すだけ」
先生は歯を見せて、ニッと笑う。

「じゃあ、先生からのお返し楽しみにしてますね」


バレンタインチョコを渡すことに成功した。
おまけにお返しまでもらえるなんて…
勇気を出して行動してみてよかった。



先生と一緒にいると、先生のことがもっと好きになってしまう。
この大きくなっていく気持ちは、どこに向かうんだろう。