そんなことを考えていたある日のこと、先生と話すチャンスが急に訪れた。






放課後、今日は桃の部活がある日だから図書室で勉強をして待つことにした。
相変わらず先生と話すことはおろか、目を合わすこともできない日が続いている。

図書室は静かで、とても勉強が捗った。
でも教えてもらえる人がいないから、分からない問題があると問題を解くのに手間取ってしまう。

分からない問題に当たってしまい、うーんと考えながら、ふと図書室を見渡すと春野先生の姿が見えた。

どうしよう!と慌てていると、心なしか先生からの視線を感じる。
視線を感じ硬直していると、先生が私の方に向かって歩いてくる。

「図書室で勉強、捗るよね」
図書室だから気を使っているのか、先生は小声だ。

私がなんと返答しようか戸惑っていると、私の手元を見た先生は
「その問題桜木が苦手な分野じゃなかったっけ?」と聞いてきた。

さすが先生、私の苦手分野を覚えてくれていた。
せっかく話かけてくれたのに無視するわけにもいかず、なんとか声を振り絞る。
声を振り絞るといっても、図書室なので私も小声で返す。
「そうなんです。ここが分からなくて手が止まっちゃいました」

先生の目を久しぶりに見た気がする。
くりくりな目が私を見つめる。
こんなこと言ったら先生、怒るかもしれないけど顔立ちが綺麗だから、女の子みたい。

「よかったら、教えるよ」

「ありがとうございます。えっと、教えてもらいたいんですけど図書室だと話しにくいんで、教室でもいいですか?」

さすがに静まりかえった図書室で先生に勉強を教えてもらうのは気が引ける。
先生は私の提案に了承し、久しぶりに勉強を教えてもらうことになった。