恋の行く末、ガラス越しに水の底から見守って…

 おっ、今日の餌やり当番はサクトか。


 リョウカに見惚れっぱなしの放課後と違って、昼休みに会うサクトの顔は締まりがあって……ってほどではないか。それは言い過ぎだった。


 でもニュートラルな感じ。


 サクトが手始めに、熱帯魚の餌を取ろうとしたときだった。


 生物室の出入口から声がした。


「あっ、今日の当番は岩藤くんなんだ。ご苦労様」


 レミだった。


 昼休みの生物室なんて、餌やり当番の生物部員と生物教諭ぐらいしか来訪者はいないのに。


 生物部員とはいえ、当番でもないレミが来るなんて、どうしたんだろう?


「市ノ瀬先輩、どうしたんですか? ……っ!」


 サクト? サクトこそ、どうしたっていうの!? しっかりして!


 心臓が止まっちゃったんじゃないかって心配になるくらい、サクトは驚いている。


 サクトは人前であまり感情を表に出さないし、今も出ていないけれど、私にはそれが分かった。


 だって私は、生き物を観察する側の生物部員であるサクトのことを、逆にこっそり観察対象にしているから。