好きな人に見られながらで緊張したサクトは、いつも以上にゆっくりと私の顔の前に餌を持ってきた。
私はタイミングを待って餌を吸い込んだ。
「わー、可愛い!」
リョウカがハシャいだ。
サクトは顔にも声にも出さなかったけれど、確かに心の中でガッツポーズをしたはずだ。
ふふん、私に感謝してよね。
これで、生物部で飼育している生き物全ての餌やりは終了だ。
サクトは、それから必要以上に時間をかけて片付けに取り掛かった。
いつもだったら、高速で片付けて、さっさといなくなるっていうのに。
今日だけは去りがたいんだね。



