あの日ふたりは夢を描いた

「……もう行かないと」

独りでにそう声を出していた。なぜだか、魔法が溶ける前のシンデレラの気持ちが想像できた。


「今日、きみと話せてよかった」

彼は前を向いたまま静かにそう言った。

「……うん」

今はそれだけ言うのが精一杯で。『私も話せてよかった』なんて言葉言えなかったけれど、本心はそう思っていた。

短時間で人を魅了する彼は、やっぱりアイドルにふさわしい。

私たちは食べたものを急いで片付け、視聴覚室を後にした。

二人で階段を下り三階の教室にたどり着くまで、少し距離をとって歩いた。

おそらくデビューが近いであろうアイドルに、なにか変な噂が立ったら困るという私なりの配慮だった。