「ただいま」

「おかえり真白。あれ、今日はバイトの日じゃなかった?」

「お母さん……」

「……どうした?なにかあった?」

「大切な人が、死んじゃったみたいなんだ」

震える声でそう伝える。

学校で我慢していた大粒の涙がこぼれ落ちて、両手で顔をおおった。

泣き崩れる私をお母さんは詳しい事情も聞かずに抱きしめた。

「……今日お通夜に行かないと」

「わかった。わかったから」

お母さんは震える私の背中をいつまでも撫でていた。

その日、陽が落ちた十八時から始まる通夜に出向いた。

人の多い場所は緊張するけれど、そんなことを考える余裕も今はなかった。

一連の儀式を行うことで『彼は死んでしまったんだと』痛烈に感じた。

ただただ、現実を受け止めるのに必死だった。