あの日ふたりは夢を描いた

沈んだ気持ちのまま電車に揺られていると、いつの間にか家の最寄駅に到着していて慌ててホームに降りる。

まだ空は明るく、バイト終わりのときみたいに星は見えない。自転車を力なくふらふらと漕ぎながら、家までの道を走った。

玄関脇に自転車を止め家に入る。

リビングのドアを開けると、お母さんが老眼鏡をかけながら椅子に座って編み物をしていた。

夕食を作り始めるにはまだ早い時間だった。

「おかえり」

久しぶりに聞いたお母さんの優しい『おかえり』の声に一瞬固まる。