あの日ふたりは夢を描いた

「長居しちゃってごめんね。そろそろ帰るよ」

「そう?もっといればいいのに」

「ううん、ジャージありがとね。今度学校で返すね」

『送っていく』という彼の申し出を丁寧に断り、玄関までの見送りをしてもらう。

「今日は本当にありがとう。元気が出たよ」

「雨に濡れて体冷えてると思うから、ゆっくり湯船に浸かってね」

「うん、また学校でね」

そう言って彼の家をあとにした。
そのときには薬のことなんて、すっかり頭から消え去っていた。

彼はいつまでも私の日常の中にいる、そう信じていたかったんだと思う。