私は、一人で廊下を歩いていた。
いつもは、どんな事があっても他人に対してこんな風になる事はないのに。
初めての感覚で怒りなのかどうかもわからないけど、なんだかもやっとする。
不満を胸の内に抱えながら、咲空とお互い黙ったまま、並んで歩く。
「おはよ、愛姫ちゃん。」
突然、優しいふんわりした声が背後から聞こえた。
ぼーっと歩いていた私は、誰かに話しかけられるなんて思ってなくて、転びそうになる。
姿勢を戻して振り向くと、そこには詩歩ちゃんが手を振っていた。
私と詩歩ちゃんは、小学校からの仲なんだ。
「あ、大樹じゃん。」
「よっ、咲空」
詩歩ちゃんの隣に立っていた、内海くんはじゃあな、と、言い残して、咲空と並んで歩いていく。
詩歩ちゃんと内海君は、家が隣同士で幼馴染なんだって。
詩歩ちゃんは、ストレートな黒髪を二つ結びにして、目はぱっちりと大きくて、とっても可愛い女の子。
内海君は、ちょっとつり目の瞳は詩歩ちゃんを見ている時だけすごく優しくなる。
多分、詩歩ちゃんのことが好きなんだと思う。
詩歩ちゃんは...どうなんだろう、あんまりそう言う話、したことないからわかんないや。
「あ、愛姫ちゃん、寝癖ついてるよ。」
「えっ?!うそ!」
詩歩ちゃんはいつも優しくて、にこにこしてて、実は、私にとって憧れの女の子。
些細な変化にも気づいてくれる。
「あとで直してあげるから、教室行こう。」
「うん。」
先を歩いていた二人はもう見えなくなっていた。
教室に入ると、咲空と内海君は何人かの男子と、後ろの方で話していた。
人気者だなあ...。
私は、何人かのクラスメイトと挨拶を交わして席に着くとそれに気付いた、一人の女の子が私に近づいてきた。
「ねえ愛姫、今日、咲空と一緒に走って来てたでしょ。」
「咲良ちゃん、おはよう。えっと...一緒に来たよ。」
咲良ちゃんは、低めのサイドテールを揺らしながら聞いてくる。
咲良ちゃんこと、望月咲良ちゃんとも、小学校から一緒でいつも助けてもらってるんだ。
咲良ちゃんは、他の女の子と違って誰と誰が一緒にいても、騒がない、カッコいい女の子...なんだけど、やっぱり地味な私と咲空が一緒に歩いてきたのには驚いたみたい。
「なんで、咲空なんかと?」
「そんなことよりも、珍しいね。
咲良ちゃん、いつもそう言うのに興味なさそうなのに。」
「一応、アイツとは遠い親戚なのよ。」
「遠い親戚って言っても咲良と若林君って従兄弟同士でしょ。」
にこにこと静かに話を聞いていた詩歩ちゃんが、独り言をこぼすように言う。
「え!そうだったの!?」
私てっきり、遠いっておじいちゃんのおじいちゃんのおばさんの、妹の...って感じだと思ってた。
詩歩ちゃんは、幼稚園の時から咲良ちゃんと一緒なんだもんね。そりゃあ、知ってるか。
「そんなに近かったのかぁ...。」
「うん、でもいつも喧嘩で仲悪いよ。」
「ええ......」
そうなんだ、でも喧嘩するほど仲がいいって言うしね。
でもそうやって言うと、咲良ちゃんは"違うから!"って、言うだろう。だから、言わないでおく。
「って、話を逸らさない!ちゃんと、質問に答えてよ!なんで咲空なんかと来てたの?!」
ば、バレた...、このまま話を逸らせると思ったんだけどな...。
怒りながら、問い詰めてくる咲良ちゃんをまあまあとなだめていると、背後から可愛い女の子たちの声が聞こえてきた。
「あ、いた!愛姫ちゃん!」
振り向くと、三人の女の子がいた。
右から、高津莉理ちゃん、瑠奈ちゃんとりんちゃんこと東雲りんりちゃんとは、私の友達。
莉理ちゃんはロング、瑠奈ちゃんはショートの茶髪をサイドで編み込みにしている、そっくりな双子。
二人は、人気雑誌のモデルとしても活動していて、私の自慢の友達なんだ。
そして、りんちゃんは肩ぐらいの黒髪をハーフアップにしていて、優しくて可愛い女の子。
この三人は仲が良くていつも一緒なの。
「なんで、若林君と来てたの?」
りんちゃんは、ほんわかと不思議そうに言う。
「ええっと......。」
私が答え方に悩んでると、肩に何かが当たった。
「俺ら、婚約してんの。」
反射的に真横を向くと、真剣な顔の咲空がいた。
「「えっ!」」
みんな、それぞれの反応をしてるけど、咲良ちゃんは、そう言うことね、と頷いていた。
「咲空、やっと婚約者が見つかったのね。」
大人っぽく、咲良ちゃんが言うと
「ああ、まあな。」
と、咲空がクールに言う。
うーん、やっぱり咲良ちゃんと咲空って犬猿の仲なのかな。
火花が飛んでる気がする...。
「愛姫、若林なんかと結婚するの?」
瑠奈ちゃんは、毒舌だし...。
「おい、なんかってなんだよ。」
ひええ、今度は瑠奈ちゃんに火花が飛んできた...!
「愛姫ちゃん、結婚式には絶対呼んでね。」
「へっ?」
けっこん!?けっこんってあの結婚!?
「愛姫、どんなドレスかな〜。」
「いや、ドレスじゃなくて和装よ。」
「...マーメイドドレスもいいかも。」
「愛姫ちゃん、式場はどこ?」
しきじょう?!
なんか勝手に話が進んでますが...!
キーンコーンカーンコーン
「あ、チャイム鳴った。」
瑠奈ちゃんが声を上げた瞬間。
「チャイム、鳴ったぞー、席つけー。」
と、先生が入ってきた。
みんな、それぞれ急いで席に着いて行く。
一方で私は、嵐が去った後のようにただ呆然としていた。
いつもは、どんな事があっても他人に対してこんな風になる事はないのに。
初めての感覚で怒りなのかどうかもわからないけど、なんだかもやっとする。
不満を胸の内に抱えながら、咲空とお互い黙ったまま、並んで歩く。
「おはよ、愛姫ちゃん。」
突然、優しいふんわりした声が背後から聞こえた。
ぼーっと歩いていた私は、誰かに話しかけられるなんて思ってなくて、転びそうになる。
姿勢を戻して振り向くと、そこには詩歩ちゃんが手を振っていた。
私と詩歩ちゃんは、小学校からの仲なんだ。
「あ、大樹じゃん。」
「よっ、咲空」
詩歩ちゃんの隣に立っていた、内海くんはじゃあな、と、言い残して、咲空と並んで歩いていく。
詩歩ちゃんと内海君は、家が隣同士で幼馴染なんだって。
詩歩ちゃんは、ストレートな黒髪を二つ結びにして、目はぱっちりと大きくて、とっても可愛い女の子。
内海君は、ちょっとつり目の瞳は詩歩ちゃんを見ている時だけすごく優しくなる。
多分、詩歩ちゃんのことが好きなんだと思う。
詩歩ちゃんは...どうなんだろう、あんまりそう言う話、したことないからわかんないや。
「あ、愛姫ちゃん、寝癖ついてるよ。」
「えっ?!うそ!」
詩歩ちゃんはいつも優しくて、にこにこしてて、実は、私にとって憧れの女の子。
些細な変化にも気づいてくれる。
「あとで直してあげるから、教室行こう。」
「うん。」
先を歩いていた二人はもう見えなくなっていた。
教室に入ると、咲空と内海君は何人かの男子と、後ろの方で話していた。
人気者だなあ...。
私は、何人かのクラスメイトと挨拶を交わして席に着くとそれに気付いた、一人の女の子が私に近づいてきた。
「ねえ愛姫、今日、咲空と一緒に走って来てたでしょ。」
「咲良ちゃん、おはよう。えっと...一緒に来たよ。」
咲良ちゃんは、低めのサイドテールを揺らしながら聞いてくる。
咲良ちゃんこと、望月咲良ちゃんとも、小学校から一緒でいつも助けてもらってるんだ。
咲良ちゃんは、他の女の子と違って誰と誰が一緒にいても、騒がない、カッコいい女の子...なんだけど、やっぱり地味な私と咲空が一緒に歩いてきたのには驚いたみたい。
「なんで、咲空なんかと?」
「そんなことよりも、珍しいね。
咲良ちゃん、いつもそう言うのに興味なさそうなのに。」
「一応、アイツとは遠い親戚なのよ。」
「遠い親戚って言っても咲良と若林君って従兄弟同士でしょ。」
にこにこと静かに話を聞いていた詩歩ちゃんが、独り言をこぼすように言う。
「え!そうだったの!?」
私てっきり、遠いっておじいちゃんのおじいちゃんのおばさんの、妹の...って感じだと思ってた。
詩歩ちゃんは、幼稚園の時から咲良ちゃんと一緒なんだもんね。そりゃあ、知ってるか。
「そんなに近かったのかぁ...。」
「うん、でもいつも喧嘩で仲悪いよ。」
「ええ......」
そうなんだ、でも喧嘩するほど仲がいいって言うしね。
でもそうやって言うと、咲良ちゃんは"違うから!"って、言うだろう。だから、言わないでおく。
「って、話を逸らさない!ちゃんと、質問に答えてよ!なんで咲空なんかと来てたの?!」
ば、バレた...、このまま話を逸らせると思ったんだけどな...。
怒りながら、問い詰めてくる咲良ちゃんをまあまあとなだめていると、背後から可愛い女の子たちの声が聞こえてきた。
「あ、いた!愛姫ちゃん!」
振り向くと、三人の女の子がいた。
右から、高津莉理ちゃん、瑠奈ちゃんとりんちゃんこと東雲りんりちゃんとは、私の友達。
莉理ちゃんはロング、瑠奈ちゃんはショートの茶髪をサイドで編み込みにしている、そっくりな双子。
二人は、人気雑誌のモデルとしても活動していて、私の自慢の友達なんだ。
そして、りんちゃんは肩ぐらいの黒髪をハーフアップにしていて、優しくて可愛い女の子。
この三人は仲が良くていつも一緒なの。
「なんで、若林君と来てたの?」
りんちゃんは、ほんわかと不思議そうに言う。
「ええっと......。」
私が答え方に悩んでると、肩に何かが当たった。
「俺ら、婚約してんの。」
反射的に真横を向くと、真剣な顔の咲空がいた。
「「えっ!」」
みんな、それぞれの反応をしてるけど、咲良ちゃんは、そう言うことね、と頷いていた。
「咲空、やっと婚約者が見つかったのね。」
大人っぽく、咲良ちゃんが言うと
「ああ、まあな。」
と、咲空がクールに言う。
うーん、やっぱり咲良ちゃんと咲空って犬猿の仲なのかな。
火花が飛んでる気がする...。
「愛姫、若林なんかと結婚するの?」
瑠奈ちゃんは、毒舌だし...。
「おい、なんかってなんだよ。」
ひええ、今度は瑠奈ちゃんに火花が飛んできた...!
「愛姫ちゃん、結婚式には絶対呼んでね。」
「へっ?」
けっこん!?けっこんってあの結婚!?
「愛姫、どんなドレスかな〜。」
「いや、ドレスじゃなくて和装よ。」
「...マーメイドドレスもいいかも。」
「愛姫ちゃん、式場はどこ?」
しきじょう?!
なんか勝手に話が進んでますが...!
キーンコーンカーンコーン
「あ、チャイム鳴った。」
瑠奈ちゃんが声を上げた瞬間。
「チャイム、鳴ったぞー、席つけー。」
と、先生が入ってきた。
みんな、それぞれ急いで席に着いて行く。
一方で私は、嵐が去った後のようにただ呆然としていた。