ピリリリリ...ピリリリリ...
 目覚まし時計の音がする......。
 眠たいけど気合いでなんとか起き上がる。
 目を擦りながら、辺りを見回すといつもと違う風景が広がっていた。
 ...ここは...ああ、そうだ。私、咲空と婚約して咲空の家にいるんだ。
「愛姫ー、起きてるー?」
 ドアの外から咲空の元気な声が聞こえてきた。
「起きてるよー。」
 聞こえるように少し大きめな声で返事をする。
「じゃあ、ご飯できてるから来てねー。」
「はーい!」
 スマホで時間を確認すると、いつもより少し遅めの時間だった。
 布団から出て、クローゼットの前に立つ。
 私の通っている学校、若林学園中等部の制服は、チェック柄のスカートとリボンが可愛いの。
 この制服目当てに入学してくる生徒もいる。
 でも、女子生徒の半分以上は男の子目当てにしているだろう。
 私が通っている学校はカッコいい男の子が多い。
 私は近くだったからココにしたけど、遠いところからわざわざ通っている子もいるしなぁ...。
 そんなことを考えながら私は、着替えが終わって部屋を出る。
 ドアの前咲空が待っていてくれていた。
「咲空、おはよう。体調は大丈夫?」
「おはよ、愛姫。体調はもう平気だよ。
 それより、昨日はありがとう。」
 昨日って咲空が、熱を出した時のことだよね。
 ...思い出すだけでも、顔が熱くなる。
 熱くなったほっぺたを手で抑えていると、咲空が私の手を取って自分の口に近づけた。
 ......?
 不思議に思っていると、 ちゅっ と、言うリップ音が響いた。
「...っ!!」
 .......え?
 ...さ、咲空、今、わ、私の手の甲にキ、キ、キスをした...。
「今日...も、か、かわいい。」
 咲空は顔を真っ赤にしながら言った。
「お、思ったより恥ずいな...。」
 もちろん私も赤くなっていて、倒れてしまいそうだった。
 だって、キ、キスされて、(手にだけど)かわいいって言われて...。
 しかも、相手は咲空だし...。
 まず、咲空ってその...カッコいいし...。
「えっと...。」
「愛姫、が、学校遅れるよ。」
 え......?
「あ、えと...うん。」
 何もなかったかのように、歩いて行く咲空。
「あの、咲空?」
「ん?」
 前を歩いていた咲空は、やっぱりいつも通り。
 もしかしたら、私が寝ぼけてたのかな。
 まだ手の感覚は残ってて...寝ぼけてたなんてないと、思いたい自分がいる。