「咲空!」
 大好きな人の姿を見つけて、名前を呼ぶ。
「え?...愛姫...。」
 振り返った咲空は、脚を止めた。
 咲空の方へ一歩近づくたびに鼓動の音大きくなっていく。
 そして、咲空と向かい合って、すうっと深呼吸をする。
 心臓が破裂しそうなほど、どくどくと波打っている。
 でも、決めたからには勇気を出して、言わなければいけない。
 これは、私のけじめでもあるのだ。胸を張って、咲空が好きだと言えるように。
 もう一度大きく息を吸い込んで
「えっと、私、咲空が、好き、です。」
 途切れ途切れになりながらも、勇気を引っ張り出して、告げる。
「え...急にどうしたの?」
 目を見開いた咲空は、顔が赤くなってきた。
 もちろん私も、赤くなってる。湯気が出ててもおかしくない。
「咲空は好きって、言ってくれたのに私は言ってなかったから。」
 好きって言うのって、すごい勇気がいる。
 しかも、それを相手が自分のことをどう思っているかもわからない状況で言うって、とてもすごいことなんだ。
 そんなことを感じると、ぎゅっと暖かいものに包まれた。
「愛姫、俺も、俺も愛姫の倍、それ以上に好きだよ。」
 気づくと、咲空に抱きしめられていた。
 今、すっごい幸せ。
 嬉しくて嬉しくて、さっき一度止んだはずの涙がまた溢れ出てくる。
「ああ、もう泣かないで。
 可愛すぎて俺が死んじゃうから。」
 泣いてるのが可愛いって...。
 ムッとすると、咲空は笑って
「どんな顔でも可愛すぎるから、心臓がもたないってことだよ。」
 と、笑った。