もう使われてない、椅子と机を空いているスペースに持ってきて座る。
 空き教室は校舎の端にある、物置に化してる教室で人が来ることは滅多にない。
 愛姫ちゃんが座ったのを見て早速、話を始める。
「ねえ、愛姫ちゃんは咲空くんに告白された?」
 もう、聞いた話だったけど一度確認をしたかった。
「?!」
 愛姫ちゃんは分かりやすく驚いた。
 そして、顔を曇らせてうなずく。
「なんて、返事したの?」
 これも知ってる。
 それでも、愛姫ちゃんには、正直に話して欲しかった。
 愛姫ちゃんは嘘を付かずに正直にうなずく。
 そして、しばらくして、愛姫ちゃんが口を開いた...けど、また閉じる。
 愛姫ちゃんは明らかに驚いている。
 私がこんな話を持ってくるとは思わなかったのだろう。
「あのね、淡々直入に言うけど、私、咲空くんが好きだったの。」
 ...だったなんて過去形にできない。
 今だって好き。大好き。
「うん、なんとなくわかってた。でも、見ないふりをしてたの。そしたら、好きになっちゃってた。」
 申し訳なさそうに言う愛姫ちゃんに、怒りが湧いてくる。
 わかってた...?なのに、好きになっちゃった?
 それなら、せめて私に言って欲しかった。
 "咲空くんのこと好きになっちゃった"って。責めたりしないから。
 可愛くなるために、自分磨きをし続けた。
 全部、咲空くんに振り向いて欲しかったから。
 でも、その隙に、彼は愛姫ちゃんが、簡単に持って行ってしまった。
「ずるいよ......愛姫ちゃん...。」
 涙がぼたぼたと出てきて止まらなくなる。
 その時だった。
 扉が勢いよく開いて、私の幼馴染の大樹が飛び込んできた。
「水野、ごめん。こいつもらってくわ。君は帰って、咲空が待ってる。」
 私の腕を引っ張って、歩く大樹。
 気づいたら、私の身長を越していて、女の子にモテるようになった。
 小さな頃は私が引っ張っていたのに。
 教室を出て行くとき、溢れる涙でちゃんとは見えなかったけど、愛姫ちゃんの安心した顔が見えた気がする。