1番近くて、1番遠い。

少し前。


「おい、桜宮と巫がいないけど」


「…はあ!?待て、さっきまでいただろ」


美柑と亜湖がいなくなっていることに気づいた男子は元の道を戻っている。


「話に夢中になりすぎてどこか行ったんじゃね?」


「でも山道だ。安全とは限らない」


すると、上に小屋が見えた。


「…これ巫のじゃね!?」


志連が手にしたもの、それは亜湖のスイカのキーホルダーだった。


その時、声が聞こえる


「…ちゃんっ!」


美柑の声だ。


「…行くぞ」


音葉は何かを感じ、ちょっとした崖を最も簡単に登る。


「お前だったらできるだろ」


「…ふっ、お前やっぱなんかおもろい」


志連も簡単に登る。


倒れていた大木を2人して飛び超え、ドアを開けるとそこには複数の男が倒れていた。


「ったく。実力もそこそこなのに下手な真似するな気色悪い」


その言葉を発したのはまさかの美柑であった。


2人とも理解ができない。


いつもの美柑の雰囲気ではなかったからだ。


もはや別人。


纏っているオーラも、口調も、容姿以外全部違う。


「桜宮…!?」


「音葉。俺、あれに似た奴を知っている」


志連が言うもの、それは閃光総長だ。


「…お前はなんかしてんのか?」


音葉も気になって聞く。


「さあな」


志連はここに来て初めて言葉を濁した。


「まあ本人から話すまで黙っておく。いいな?」


「ん。リョーカイ」


そして男子らは帰ろうとする。


が、まだいたらしい。


「…お前はいけるか?」


「うーん、そこそこ?」


音葉は何かを感じ取る。


口調が誰かに似ていたのだ。


しかし、声帯が違う。


「…めんどいからほっとく?」


志連はめんどくさいことが嫌いだった。


「いや、桜宮らが危ないだろ。巫はなんか負傷してるみたいだし」


「…おい、そこを通せ」


「無理」「却下」


残っていたやつを一括する音葉と志連。


「避けないなら強引に行かせてもらう」


これだから喧嘩は嫌なんだ、と音葉は呟く。


「志連やって。俺は監督しておく」


「おいっ」


そんな音葉に1人が来た。


「…邪魔」


音葉は一瞬にして男を転がした。


これに志連が驚かないわけがない。


音葉はその気になると指を鳴らし、前髪を後ろへ流すような仕草をする。


「俺はお前を知っている」


「…誰だ」


「さあな。10回は会ってると思う。今年も2、3回会ったぜ?総長さん」




今までの志連とは違う口調や声帯。音葉はその言葉から全てを悟った。


「なるほどな。確かに会ってるな。…牙城…、だろ」


「あーあ、ぜーんぶ明かしちゃった」


志連はふざけてるようで笑いながら次々と倒している。


「がっ、…牙城…!?」


倒れた男が口を開く。


「あっれ~?聞いてたんだ」


もう志連はキャラ崩壊している。


「もしさ、閃光とか紅蓮が桜宮とかだったらどうする?可能性はあるわけじゃん?」


「…桜宮」


そう呼ぶと音葉の心は切なく、暖かくなる。


「最強くんの弱点みっけ」


「うるさいな…」


音葉は最後の1人を転がせ、体操服を払う。


もう美柑も出てくる頃だ。


「あれ?志連くん?音葉くん…?」


美柑は呆然とした。


“桜宮美柑side”


なんで2人がここにいるんだろう。



「でもちょうど良かった。あの、亜湖が足挫いちゃって…」


「だ、大丈夫だよっ」


亜湖はそんなことを言っているが、今にもよろけそうだ。


「…巫」


志連くんがそう言ったかと思えば、亜湖を最も簡単に抱き上げた。


「わっ!?」


「コイツ連れてくから2人でゴールして」


そう言って亜湖を横に抱えたまま志連くんは歩いていった。


「ちょっ、大丈夫だからっ」


「大丈夫じゃないからこうしてるんだろ」


なんて亜湖と志連くんの甘酸っぱい(?)会話が聞こえる。


「…んじゃ、行くか」


「うん。…でも1個聞きたいことがあるんだけど」


「どうした?」


「この倒れてる人、どうしたの?」


すると音葉くんは少し黙り込んだ。


「ほぼ志連がやった」


ほぼ…?


というか、志連くんがやった!?


「す、すごいんだね、志連くんって」


一応、ほぼのところは関わらないでおこう。


「桜宮も桜宮ですごかったけどな…」


音葉くんが何か呟いた。