「――――――どうやら、ちゃんと条件は守ってもらえたらしいな」

「……何がですか?」


 気づけば、わたしの目の前に、エルヴィス殿下によく似た男性が立っていた。
 わたしのことを上から下までじろじろ眺めて値踏みしつつ、殿下はニヤリと口の端を上げる。意地の悪い笑み。だけど、そういうのに耐性のないお上品な令嬢方がメロメロになりそうな、そんな表情にも見える。
 怪訝な表情を浮かべるわたしに、殿下はクッと喉を鳴らした。


「この俺が生徒会長なんてクソ面倒くさい役割を務めるんだ。役員はあいつらだけじゃダメだって言うし、最後の一人の条件として、控えめで口が堅い、堅実な人間を要望した。ここでのことを口外しようとか、妃になろうって野心を持つような人間だけは寄こすなと言っておいたんだが」


 満足気な笑み。何だか腹が立ってきて、眉間にそっと皺を寄せる。


「……つまり、殿下に興味が無く、かつ殿下の本性を口外しないような人間を希望されていた、という認識でよろしいんでしょうか?」