(あぁーーーー、まずったなぁ)


 広い生徒会室の中、妙に狭苦しい思いをしながら、わたしは深々とため息と吐く。

 あの日から殿下は、これまで以上にわたしに絡んでくるようになった。
 生徒会室内だけならまだしも、校舎でも、令嬢たちに囲まれていても、どこでもここでも声を掛けてくる。おまけに、ストーカーでもされてるんじゃないかってぐらいに粘着質だし神出鬼没。これじゃ気が休まる暇がない。鬱陶しいっていうか、正直言って困る。


『ザラ!』


 普段とは違う、キラキラした笑顔で笑いかけてくる殿下を見ると、身体中がゾワゾワとむず痒い。おまけに彼との結婚を狙う貴族の令嬢方の般若みたいな表情が、前世の嫌~~な記憶を呼び起こした。


『生徒会室以外で声を掛けないで下さいとお願いしましたよね、わたし』


 わたしの頭を撫でようとする殿下から距離を取りつつ、小さな声で抗議する。令嬢方の刺すような視線が痛い。早くこの場から立ち去りたくて、わたしは目を吊り上げた。


『悪いな、自分の気持ちに正直に動いたらこうなった』


 なのに、殿下はそんなことを口にしつつ、耳元で笑うのだから腹立たしい。