「控えめで先生の頼みもよく聞くしさ。優秀って成績だけを言うんじゃないと思うけど」


 オースティンはわたしのことを撫でながら穏やかに笑う。


(そういうもん? そっか……これからはもっと気を付けないと)


 認識を新たに、わたしは静かにため息を吐く。


「だけど、ザラはついてるよ」

「ついてる? なにが?」

「あのね、今年の生徒会はエルヴィス殿下が会長を務めるんだって」

「エルヴィス、殿下? そんな……嘘でしょう⁉」


 思わぬ情報に、唖然としてしまう。


(信じられない。まさか、生徒会なんて面倒な仕事を王族に押し付けるとは……)


 平民で足りないなら、貴族のボンボンで良いじゃない。それとも、最も高貴な人を差し置いて、長を立てることは出来ないと思ったのだろうか?


「確かな情報筋から聞いた話だから本当だよ。多分、殿下が生徒会に入るってバレたら、女の子たち皆が手を挙げて大変なことになるから、今日まで伏せられてたんだと思う」


 オースティンはわたしの気持ちに構うことなく、淡々と事実を述べる。
 どちらにせよ、わたしの読みが浅かったことは事実だ。緊張で背筋がビリビリと震える。逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。