「実際そうだろう? 群がってくる女どもの中で、俺の内面を見てる奴なんて一人もいねぇよ。見せてないからっていう理由もあるけど、誰一人として見ようとしない。疑いもしない。……まぁ、実際誰も見たくねぇだろうけどな、こんな俺の姿は」


 殿下は面倒くさそうにため息を吐きつつ、大きく伸びをした。その不満げな横顔が、何だか自分に重なって見える。気持ちが消化不良を起こしていて、モヤモヤしている――――そんな感じの表情だ。


(本当にそうなのかなぁ?)


 確かに、初めてこの部屋で殿下と会った時は、普段とのあまりのギャップに面食らった。優雅さの欠片も無ければ、いつも大安売りしている笑顔すらもなく、別人じゃないかと疑う程だった。

 だけど、最初に『完璧な王子様』っていう先入観を抱いてなければ、さほど驚かなかった気がするし、ある程度は普通に受け入れられていた気がする。王子だって人間だもの。完璧であり続ける必要は無いんじゃないかなぁってわたしは思う。


「疲れませんか? そんな風に自分を偽って生きるの」