自嘲した秋人は、どこか照れ臭そうだ。
彼らしくない弱気な言葉に表情が緩みつつ、受け取った紙袋を緊張しながら覗く。
その中には両手に収まるほどのブラックの正方形の箱が入っており、筆記体で“Chiara Flaubert”と記されていた。
「えっ!? 秋人、これってフランスの有名なフラワーアーティストの……よね?」
ドキドキと鼓動が高鳴り、箱を持つ手が震えてしまう。
Chiara Flaubert――彼女の作品は主にファッションショーや海外アーティストのコンサート、
彼女が建てた植物園の一角でしか見ることができない。
フラワーアーティストの巨匠でその実力は世界でNO.1と称されているのだ。
一部の富裕層や著名人などからしか、個人的な受注は受け付けてないと聞いたことがあった。
「彼女とは友人を通して知り合うことができたんだ。無理を言って大急ぎで作ってもらったよ」
「本当に信じられない。秋人、ありがとう」
感動でそれ以上の言葉が出ない。
秋人が三年前からさらにすごい人になったことは頭では分かっていたけれど、
今。この手のひらにのっている箱を見て、圧倒されている。
恐る恐る箱を開けると、ふわりとやわらかい薔薇の香りが立ち込めた。
中は枯れることのないブリザーブドフラワーになっており、
淡いピンク、白い薔薇とカスミソウが三体の天使のモチーフを飾るようにして敷き詰められている。
とても小さな空間の中に、慈悲や愛などを感じて思わず顔がほころんだ。
「温かい作品。見ているだけで幸せな気持ちになる」
「今の結愛をイメージして作ってもらった。以前から感じていた強さや純粋さだけじゃなく、包み込むような愛を感じる」
秋人の柔らかい声色に、思わず顔をあげた。
私を見つめる漆黒の瞳は優しく揺らぎ、彼自身から深い愛を感じる。
「……この前、あやめちゃんの中に結愛の面影を見つけて、なんて可愛いんだろうと思った。君に似て、きっと素直でいい子なんだろうな」
「秋人」
彼の言葉に、胸が熱くなる。
あのあと、秋人があやめと初めて会ってどんな印象を抱いたのか、内心気になっていた。
矛盾した考えだとは分かっていたけれど、血がつながったあやめを彼に愛してほしいと……心のどこかで、願っていた。
「それで最近一気に寒くなったし、あやめちゃんの冬服をいくつかプレゼントしたいと思って、店の者といっしょに選んで買ったんだ。結愛、サイズや彼女の好みを確認してくれるか?」

