秋人がさらに口を開こうとしたそのとき、社長室のある十五階に到着した。
「結愛が訪問するときは必ずここで呼んでくれ」
秋人は重厚なドアの横にあるインターホンを私に伝えると、
すぐ下に設置されていたセキュリティゲートにスマホをかざし、社長室の鍵を解除した。
ワンフロアを丸ごとつかった社長室は窓が百八十度ガラス張りで、白を基調としている。
オフィスエントランスとは真逆の、圧倒的な開放感を放っていた。
「なんて素敵な部屋なの……? 秋人はいつもここで作業しているの?」
「ああ。会議と出張以外はずっといる。仕事が捗るんだ」
「絶対にそうよね」
磨かれ切った大理石と天井から下がったシャンデリアは豪奢な印象で、
デスクや来客用のテーブルやソファはパッと見た感じ、すべて伝統的なイギリス調のもので揃えられている。
嫌味のない、上品な様は秋人に通づるものがあった。
ある意味、世間や私の〝葛城堂〟の高級感がそのまま体現されていると言ってもよい。
「高貴な百合の花もいいけど、春はスズラン、夏はマーガレットみたいな白い花も、上手く使えたらいいわね。窓の温かい光で映えるから……」
秋人といっしょにデスクの前に立った私は、思わず想像力が働かせ両手を動かし、それらを形付ける。
秋人にこれ以上接触をするのはやめてほしいと伝えるはずだったのに、まったく真逆な感情が働いてしまっている。
この部屋を花でもっと素敵にできたらと。
そして、秋人の仕事の疲労が少しでも癒されたらいいと……。
「結愛のその顔が見たかったんだ、ずっと……。ここに連れてきて本当によかったよ」

