「よかった。じゃあ、行きましょう」
秋人は私に笑いかけ、一緒にいたふたりに軽い挨拶を済ませる。
店長は私の肩をとんっと叩くと小声で「頼むぞ!」と𠮟咤激励してきた。
たしかにお店にとったら、一流企業の定期顧客ができたも同然だ。
まだまだ新人とて、私がへまをすることは絶対に許されない。
秋人がそういった私の立場や、貴船フラワーの状況などもすべて分かった上で、
この状況に持ち込んでいるような気がした。
付き合っているときから、彼がとても頭がいいということは知っていた。
しかしビジネス……(とは私のことでは言わないけれど)となれば、かなり計算高いところがあるようだ。
秋人のあとをついてゆき、従業員専用通路に通してもらった私は、ショートカットして、人目のつかない扉から店の外に出た。
銀座葛城堂の裏には、前衛的な外観のビルが並んでおり、その中のひとつが本社のようだ。
アールデコ調の昭和風味の残る店舗とは違って、全面三角の形で切り抜かれたガラス張りのビルは、とても近代的だ。
「……ここがエントランス部分だ。四季に合わせた花を飾ってほしいが、デザインは結愛の自由にしてくれていい。花瓶はこちらで用意する」
「分かったわ」

