そう言ってくれた薫のことをよくできた兄だと慕いつつも、父から認められない現実に嫉妬心があったことは否めない。
それに加え、どこに行っても財閥である葛城家の次男として扱われる生活が苦しかった。
親族からも教師からもそして友人からも、だ――。
俺はそんな生活に終止符を打つため、葛城家を出て自分の力で仲間を集め、起業した。
父親は家を出ていく俺に何も言わなかった。
なんだか、悔しかった。
俺はさらに父親に認められたいという気持ちが強まった。
結愛にも、俺が葛城家の次男ということは話していない。
家柄というのを抜きにして自分という存在に、価値を見出してほしかったからだ。
この一件は、やっと“自分自身”を愛してくれる女性に出会った、矢先のことだった。
一方薫は葛城家の顔として順調に出世し、副社長に就いていた。
この旅行は薫にとって、代表取締役社長を退任した父の代わりに就任する前の、最後の休暇だったのだ。
『兄さん、本当におめでとう。社長になったらもっと時間がなくなるんだから、思いきり遊んでこいよ』
『ああ、今回ばかりは羽目を外させてもらう』
そんな話を先週したばかりなのに。

