結愛は空間デザインの本を手に、俺の方へ肩を寄せてきた。
この本は貴船店長に借りたものらしく、結構使い込まれている。
俺たちは、来年春に向けて、挙式をすることに決めた。
「いいと思うよ。純白のドレスが映えそうだ」
「かな……楽しみ。悔いのないよう、それまでに腕も磨かなくちゃ」
「ああ、楽しみにしている」
結愛は本を手に、目を三日月にして笑った。
式場の空間デザインを、貴船フラワーに依頼しようと提案したのは俺だ。
結愛は従業員の自分のために、なんだか申し訳ないと気負いしていたが、俺からその案を貴船店長に相談したところ、快諾してくれたのだ。
結愛はだったら自分も一緒に作りたいと申し立て、今は貴船店長とともにデザインの考案に入っているようだ。
雪平にフォトスペースの制作物を壊され、大変な目にあったりもしたが、結愛の夢に対する情熱は今でも衰えていない。
そんな彼女の前向きな姿勢を、うちの父は買ったようだ。
俺の心配をよそに、父は彼女にとても好意的に接してくれている。
あの事件をきっかけに、葛城堂はきっぱりとHappit生命――というより、雪平梢と縁を切ることができたというのも、わだかまりの解消に向けて大きかったのかもしれない。

