秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています


そんな甘い期待を抱きながら、秋人といっしょに手分けしてしばらく薔薇を配り続けた。

「わぁ、綺麗~! リビングに飾ろっと」

「ありがとうございます」

お客さんを見送った直後、視界の端に人影が映る。

私は顔を上げ、笑顔をそちらのほうに向けた。

「薔薇の花、どう――……」

ドクッと心臓が大きな音を立て、次に続く言葉が消える。

私たちの前にやって来たのは……秋人の父と、そして宮森さんだった。

隣に立っていた秋人も息を吞んだのが分かる。

「ご苦労様。イベントは大盛況だな、秋人」

「ご無沙汰しております、瀬名様」

秋人の父に続き、宮森さんが口を開く。

ふたりの私たちを見る目は、三年前に見たあのときと同様に険しかった。

「今日は来るなと言ったはずだ」

秋人は守るようにして私の前に立ち、彼らの壁になってくれる。

緊張で目の前のジャケットの裾を握りしめてしまう。

恐怖と緊張で心臓が痛い。

ふたりは、私と秋人の間に子供がいることも、すでに全部知っている。

いったい、今から私は何を言われるのだろう……?

気持ちの準備はしていたつもりでも、いざこんな状況になると怯えてしまう。

すると秋人の父は、突然大きなため息をついた。

「どうやらこのイベントは、大変な目に遭ったようだな。警察沙汰になってもおかしくない」