受け取った女性は手に持った薔薇を眺め、何度も瞬きをしている。
「ええ、お家で少しの間でも飾ってもらえると、花も喜びます」
「じゃあ……お言葉に甘えて……!」
女性たちは喜んで薔薇を受け取ってくれて、写真も楽しそうに撮ってくれた。
彼女たちを皮切りに、女性たちが続々とフォトスペースに訪れてくれる。
どうやら、赤い一輪の薔薇が目立って、集客効果を呼んだようだ。
中にはバラの花だけを求めるマダムもいらっしゃったけれど、それでも立ち寄ってくれるということが嬉しい。
花で作ったオブジェも、そして余ってしまった薔薇も、喜んで笑っているようだった。
自分たちが人々を幸せな気持ちにしているのが、きっと分かっているのだろう。
するとしばらくして、仕事に戻っていたはずの秋人がフォトスペースに戻って来てくれた。
「結愛、ひとりじゃ大変だろう。俺も配るのを手伝うよ」
「えっ、いいの?」
「もちろん」
秋人は私に優しく微笑みかけると、一輪の薔薇をやってきた女性たちに配り始める。
すぐに彼女たちの目がハートになったのに気づき、やっぱり複雑な気分になってしまう。
でも……秋人は私のために一生懸命に頑張ってくれている。
気持ちを切り替えよう!
このイベントが終わったら、秋人に抱きしめてもらいたい。無性に……。

